【TOYO EIWA―THE WORLD COMMENTARY】【G7シリーズ】 中国・中央アジア 首脳会議と中国のユーラシア外交

 東洋英和女学院大学は、国際関係研究所(https://www.gendaishikenkyu.net/)を付置しています。同研究所では、一般の方向けにわかりやすく時事問題を解説するToyo Eiwa The World Commentaryを発出しています。

 この度新しいコメンタリーが発出されました!ぜひご一読くださいね。


【G7シリーズ】

中国・中央アジア 首脳会議と中国のユーラシア外交

望月 敏弘(国際社会学部 教授) 

©︎FLORENCE LO / POOL / AFP


ここ数か月、中国の積極的な外交姿勢が際立っている。20233月の全人代(国会に相当)で習近平が国家主席に選出され、習政権の三期目が本格始動してから、それは顕著となった。以下、中国がG7広島サミットに日程を重ねて開催した中国・中央アジア首脳会議を中心に、中国の外交攻勢が意味するものを考える。

310日に国家主席に再選された習近平は、同月20日、先ずモスクワに向かった。習政権にとり外交上の最優先課題は対米関係の安定にあるが、アメリカは戦略的な競争相手でもある。一方、ロシアは同盟関係にはないものの、近い価値観を有する最大のパートナーである。翌21日、習近平はプーチン大統領と首脳会談を行い、合同演習など軍事面、エネルギーなど経済面での協力強化を内容とする共同声明を発表した。対米対抗上、ロシアを支える姿勢を示した。

G7広島サミットは519日から21日に開催され、核軍縮文書、ゼレンスキー大統領やモディ首相も注目されたが、「中国との向き合い方」は重要な焦点となった。G7首脳声明では、台湾海峡の平和と安定の重要性が確認され、G7経済安保声明では、中国の経済的威圧への共同対処が話し合われた。中国外交部は「中国内政に粗暴に干渉した」と即座に非難を表明した。

 本サミットと同時期、51819日、中国・中央アジア首脳会議が中国・西安(古代シルクロードの出発地、唐の都)にて開催された。国力を象徴する盛大な歓迎式典で始まった。参加者は、習近平に加えて、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタンという旧ソ連の5ヵ国の首脳であり、この枠組みでの対面による初めての首脳会議となった。参加国の地域はロシアの「裏庭」にあたり、これまで政治・軍事面ではロシア、経済面では中国が影響力を発揮してきた。いま5ヵ国は、ロシアのウクライナ侵攻に一定の距離を保つ。加えて、首脳会議では習近平から総額260億元(約5200億円)の金融支援と無償援助が約束され、治安維持やテロ対策を支援する考えも示された。この地域は「ロシア離れ」を加速させ、中国が政治的影響力を強めるのは必至である。

 74日、中国が主導的な役割を担う地域協力枠組みである上海協力機構(SCO)の首脳会議が開催され、イランが正式に加盟した。中国はロシアを支えながら、その主眼を新興国や開発途上国の支持獲得に明らかに置いている。

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