メディアの情報との向き合い方を考えよう!ーー国際社会学科 小寺敦之教授 



今日はメディア研究を専門にされている国際社会学科の小寺敦之先生にお話を伺います。

――先生の専門分野についてご説明いただけますか? 

 一般的に「メディア・コミュニケーション」や「情報行動」と呼ばれる分野を専門としています。具体的には、人の心理や行動のメカニズムを、人々が利用するメディアを通して明らかにしていくというアプローチです。学問的には、社会心理学とかコミュニケーション学に近いので、人間科学科や国際コミュニケーション学科の学生さんも授業に参加してくれています。 

 本学ではメディア関連の科目を幅広く担当しています。自分の専門に近い「メディア心理学」に加え、メディアの歴史や産業を学ぶ「メディアの歴史と現在」、海外のメディア事情を学ぶ「世界のメディア」、あとは「メディア・リテラシー」といった情報への向き合い方を実践的に考えるクラスも教えています。 あと、自分自身が調査データを使った研究をしていることもあり、社会調査の授業も担当しています。「社会調査士」という資格の学内担当者でもあります。 




――メディア研究との出会いはどのようなことがきっかけだったのでしょうか?

 私が中学~高校生の頃、社会でインパクトの大きな出来事が次々と起きました。湾岸戦争や阪神淡路大震災、そしてオウム真理教の地下鉄サリン事件。当時は、奈良の田舎町に住んでいたので、こうした出来事は新聞やテレビを通して見る世界でしかなかったわけです。でも、新聞やテレビを見て、周りの人は泣いたり怒ったり、怖がったり感動したりするわけですよ。メディアってすごいパワーを持っているんだな・・・って思っていたのがすべての始まりかもしれませんね。 

 でも、その頃は、そんなメディアの「送り手」になりたいと思っていました。受験勉強は大嫌いでしたが、幸運にも上智大学の新聞学科に合格したので「新聞記者になろう!」と意気込んで東京に出てきたんです。その勢いもあって、大学1年生は新聞社の編集局でアルバイト漬けの日々を送りました。学業は・・・・悲惨なものでしたけど(笑)。

 でも、アルバイトに没頭していたら「人に何かを伝える」のではなく「自分自身が人に何かを伝える知識のある人間になりたい」と思うようになって、しっかり勉強してみようって気になったんですね。それでアルバイトを辞めました。 

 そのあとは、面白そうな大学の授業を片っ端から履修しましたね。心理学科とか社会学科の科目が多かったかな。他学科の先生から顔を覚えられたりしてました。一般教養も随分履修しましたね。卒業時には170単位ぐらいになったかな。語学以外は成績も良かったです(今も語学は大の苦手・・・)。 

 授業以外でも、哲学、人類学、宗教学、生物学まで、気の向くままに面白そうな本をたくさん読んでいました。でも、そうしていると知識だけでなく発想の引き出しって増えるんですね。自分で言うのも何ですが、マスコミ就職のための小論文指導の授業で(もちろんいい意味で)目立ってました。今も「あのまま新聞記者を目指していたらどうなったかな・・・」って思うことがあります。 

――授業を行う上でどのようなことを大切にしていらっしゃいますか?  
  
 メディアを勉強する意味ってなかなか見出しにくいと思うんです。お金を生むわけでもないし、すぐに役立つスキルというわけでもない。 でも、私たちは新聞やテレビだけでなく、インターネットを含め、メディアに囲まれた生活を送っています。教科書だって本というメディアですよね。

 私たちが暮らすのは、メディアの情報が基盤となって、ものを考え、何かを議論して、何かを決めていく社会です。少し大げさかもしれませんが、誰がどのように情報伝えるか、どのように人々に情報が伝わるかで、戦争が起きることだってあります。無実の人が命を失ったりします。もしかしたら、次の当事者になるのは自分かもしれません。だからこそ、情報によって動かされる人間や社会を冷静に捉える視点は大事だと思うわけです。 

 毎年多くの学生さんが受講してくれる「メディア・リテラシー」の授業では、最初に「正しい情報と間違っている情報を見極めるスキルなんてありません」って宣言します。その上で、メディアの情報とどう向かえばいいのかについて考えてもらうようにしています。新聞に書いてあるから正しい、偉い人が言っているから正しい、ではなく、情報に接している自分を客観的に見れるようになってもらうのが狙いですね。 

――メディア関連の授業をどのように展開していきたいとお考えですか? 

 ゼミではすでに挑戦しているんですが、自分たちが情報の発信側になって行くようなクラスができればいいなと思っています。遊びではなく、学生が社会に主張を伝えるような活動ができるような仕掛けができればと思っています。大学にラジオ局を作るという野望を持っていますが・・・どうなるでしょうね。 

――小寺先生はお仕事一筋というイメージですが、プライベートではどんな方ですか? 

 最近はプライベートの時間はないですが・・・唯一の趣味になるのかな、スキューバダイビングのインストラクター資格を持ってます。大学でダイビング部を作ってくれたら喜んで顧問やりますので、誰か立ち上げてください(笑) 数年前から、テクニカルダイビングというちょっと高度な(マニアックな)ダイビングをやっています。シリンダを複数持って深いところまで潜る特殊なダイビングです。生理学と器材を駆使するので面白いです。もともとは海底洞窟に行ってみたいと思って始めたんですが・・・これもいつになるでしょうね。 

――先生が感じる英和の学生の良さってどんなところですか? 

 自立していて、素直な学生さんが多いと思います。他の大学から来ている先生も「英和の学生さんは新しいことを吸収する力がすごい」と仰っていますが、まだまだ自分の可能性に気づいていないだけかもしれません。だから、きっかけを与えて、力を出せるようにサポートするのが私たちの仕事だと思っています。 

 私も受験勉強を含め、ペーパー試験というものが苦手でした(今も苦手です)。でも、自分自身がそうだったように、勉強にはいろいろな取り組み方があると思います。面白いと感じたり、もっと知りたいと思ったりする経験をひとつでも多く提供できたらいいなと思っています。 

 ――これから大学生になる人たちに一言お願いします。 

 高校の進路指導では「将来のビジョンを描いて大学を考えなさい」って言われるかもしれません。それで不安になっている人もいるでしょう。でも、大学生になったら、将来のビジョンは変わります。それでいいんです。新しい知識、新しい出会いが皆さんを変えていくでしょう。高校生の自分が気づけなかった自分を発見することもあるでしょう。 大事なのは、いま自分がやりたいことからやってみること。そこから大学生活がスタートすると思います。 


 今まで、大衆に情報を発信するのは、新聞やニュース報道などのマスメディアだけだった時代から、私たちはインターネットと言う新しいツールを手に入れました。SNSを通して一般の人々が自由に情報を発信し、不特定多数の人々とやり取りができる便利で自由な時代になりました。しかし、このような時代にこそ、多様なメディアからの情報について、精査するための知識や方法学ぶ必要があると言うことを感じたインタビューでした。

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