人生は異文化コミュニケーションの連続です!ーー井上美砂講師

 

  今日は今年から国際コミュニケーション学科に就任された井上美砂先生にお話を伺います。井上先生は、異文化コミュニケーションやコミュニケーション学がご専門です。私たちが生きていく上で避けることができないコミュニケーションについて、お話を伺うのが楽しみです! 

――先生が異文化コミュニケーションに興味を持たれたのはきっかけがあったのでしょうか? 

  今までの人生の中で、異文化コミュニケーションを印象強く体験したと思える出来事が三つあります。一つ目は、高校2年生の時に、交換留学制度を利用してアメリカのワシントン州に留学したことです。その頃は、異文化コミュニケーションなんていう言葉も知らず、ただ違う世界を見てみたいという好奇心だけでした。今と違って、アメリカの方が日本より生活レベルが進んでいるように感じていましたので(実際にはそうでもありませんでしたが)、進んだ世界や生活環境を体験したいと思いました。 

30数年ぶりにホームステイしていたホストに会いに行った時の写真

 二つ目の異文化との遭遇は、結婚でした。結婚は本人同士の意思ですが、それぞれの家には、特有のルールやしきたり、習慣があります。つまり異なる家という文化の中で育てられた個人が結婚するわけですから、当然、あれ?そんなこと気にするんだとか、そんなしきたりあるの?という疑問をもちました。結婚は、お互いが育った家の文化を持ち寄り、自分たちなりにそれぞれの文化を融合させて新しい文化を創る作業なのだと感じました。 

 最後は、外資系企業に入社して、上層部がみんな外国人だった環境で働いた経験です。このときの異文化コミュニケーションの実体験から、どうしてこんなに考え方が違うんだろう、どうして理解してもらえないんだろうという疑問をもちました。そこで体験した異文化コミュニケーションをもっと学問的な視点から理解したいと考えて、大学院に進学しました。実際に主体的に異文化コミュニケーションの学びを深めたいと考えて行動したのは、大学院進学だけですが、振り返るといくつかの経験が積み重なった結果、今があるのだと感じています。

――異文化コミュニケーションってどんな学問ですか?   

 現在、世界中の多くの地域ではグローバル化が進み、政治、経済、社会、文化などいずれの領域でもヒト、モノ、カネ、情報、最近ではウィルスまでもが国境を越えて移動するようになりました。その結果として、日本社会もすでに多文化化していると考えられます。つまり、私たちは間接的にも直接的にも文化背景の異なる人々と交流を避けられないし、日本国内においても異文化コミュニケーションは起きていると考えます。そして、異なる文化間の接触は楽しいことばかりではなく、摩擦や誤解を引き起こしたり、極端な場合は、紛争に発展することさえあります。異文化コミュニケーションを学ぶ意味は、異質な他者と共に生きる意味を考えることだと思います。 

――先生の授業は、どんな感じですか?   

 入門レベルの授業では、基礎的な概念をしっかり理解して欲しいと考えています。基本を理解しないと応用はできませんので、この段階でのインプットはとても重要です。そして、中級レベルの授業では、その基礎的な知識を社会や自分の身近な事象に結びつけて具体的に理解し、さまざまな形でアウトプットしてもらうことを目指しています。上級レベルの授業では、何が問題かという最初の一歩から学生が主体となって考え、自らの考えを積極的に発言したり、その解決策を考えて発表したりと、主体的に学び、提案するというプロセスで行われます。 

――先生が授業で大切にしていらっしゃることは何でしょうか? 

  授業を運営する側としては、学生のこれからの人生に役に立つような学びを提供したいと考えています。異文化コミュニケーションは、実際に役に立たないと意味のない学問なので、「役に立つ」という点を重要視しています。社会に出たらあらゆる場面で異文化コミュニケーションに遭遇しますので、その時に戦略的にコミュニケーションできるスキルを身につけて欲しいです。例えば、人種や国籍の違いだけでなく、世代や性別、職業観の違う上司・先輩・同僚と一緒に仕事をしていくわけですから、どうしたら、円滑にコミュニケーションをとることができ、その結果として成果を上げることができるかを考えられるようになって欲しいのです。 

――今後、英和でどんなことをしたいですか?   

 英和で7年間非常勤講師として学生と関わってきましたが、今までは授業を通してのみの関係でした。今年度から専任になり、より学生と深く関われることがとても楽しみです。というのも、教員と学生という立場の違いはありますが、それは上下関係ではありません。私も学生に知の刺激を与えたいと思いますが、私自身学生の新鮮な視点から新たな気づきを得て、それをに学問レベルに昇華させて授業で投げかけたりします。 

――英和の学生に望むことはありますか? 

 大学時代、無駄な時間を過ごして欲しくないです。勉強はもちろんですが、遊びもアルバイトでもいいのですが、中身のギュッと詰まった4年間を過ごして欲しいです。社会人になって振り返るとあんなに楽しい時間があったのだと懐かしく思います。今は心身ともに充実しているはず、そのパワーを存分に活かして充実した時間を過ごして欲しいです。 

――先生はプライベートではどんな方なのでしょうか? 

 あまり面白いプライベートライフを過ごしていないのですが、強いて言えば、6年前に保護犬を2頭引き取り、今はその子たちとの時間が一番楽しいというか、幸せを感じるというか、疲れを癒してくれる存在です。彼らを見ていると心が洗われる思いがします。私の心が汚れているという意味ではありませんよ〜(苦笑)犬の話をすると止まらなくなるので、これで止めておきます(笑)。 

――これから大学生になる人たちにアドバイスをお願いします。   

 私が皆さんの年齢の頃は、明確な目標もなく、自分に何が向いているのかも分からず、どんな方向に進んだら良いのかも分からず、とても苦しい時間を過ごしました(今思うと大したことではなかったのですがその時は)。のちに、心理学を勉強したときに、それを青年期の「アイデンティティ・クライシス」というのだと知りました。

 高校時代にすでに明確な人生の目標を持っている人は少ないと思います。自分には何が向いているのか、どんな方向に進んだら良いのか分からないというのは、当たり前のことと捉え、いろんなことに挑戦してみて、その体験から見えてくるものがあると思いますので、とにかく動くこと。歩みを止めないことを心に留めて、自らの人生を切り拓いていって欲しいです。そして大学はそのお手伝いができる場所でなければいけないと考えています。

 井上先生は、9月12日(日)のオープン・キャンパスで「文化とコミュニケーション」というテーマで体験授業を担当されます。ご興味のある方はぜひご参加ください!コチラ

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