【Toyo Eiwa―The World Commentary】ロシアへの経済制裁の効果と世界経済への影響

東洋英和女学院大学は、国際関係研究所(https://www.gendaishikenkyu.net/)を付置しています。

同研究所では、一般の方向けにわかりやすく時事問題を解説するToyo Eiwa The World Commentaryを発出しています。

この度新しいコメンタリーが発出されました!ぜひご一読くださいね。



ロシアへの経済制裁の効果と世界経済への影響

袁 媛 (国際社会学部 准教授)









出典 © Andrea Renault/AFP


ロシアによるウクライナの侵攻は今でも続いており、原稿執筆時点で終結の兆しは見られていない。しかもこの戦争は両国のみならず、世界経済にも多大な影響を与えている。G7がロシアに課した前例のない厳しい経済制裁は主に、金融制裁、貿易制裁とオリガルヒの資産凍結の3つである。ここでは、金融制裁と貿易制裁について大まかな内容とその影響について述べる。

金融制裁で最もインパクトが大きいのはSWIFT(Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication、国際銀行間通信協会)からの排除である。SWIFTはベルギーにある銀行間の国際金融取引を実施する共同組合で、現在、高額なクロスボーダー決済の半分がSWIFTを利用しており、2022年には1日あたり決済額が5兆ドルにのぼっている。 

この経済制裁によって、ロシア企業と外国企業との決済が難しくなることを通じて、当初ロシア経済に激しく打撃を与え、ルーブルが下落することが想定された。しかし、ロシア政府が政策金利を20%に引き上げたことや天然ガスの購入によるルーブルでの支払いを義務づけたことによって、ルーブルは侵攻前の水準に戻った。

また、ロシアからの資源と穀物の輸入に強く依存しているドイツやアラブ諸国への大きな影響を避ける目的で、SWIFTからの排除はすべてのロシアの銀行ではなく、複数のロシア銀行を排除しなかったため、排除は不完全なものにとどまり、経済制裁が十分機能していない。

次に、最恵国待遇の取り消しや輸出入の規制などの貿易制裁については、ロシアにはもちろん制裁する側にも大きな影響を与える。ロシアは資源大国であるだけではなく、ウクライナとともに、世界有数の食糧生産地でもある。そのため、資源エネルギーの面でドイツをはじめとする欧州連合(EU)経済や日本に大きな影響を与え、食糧供給の面では、エジプトやスーダンなどアフリカ諸国の食糧不足を深刻化するとみられる。

このように、経済制裁は「両刃の剣」になり、ロシアだけではなく、制裁する側のEUや日本、その他の国々にも大きな影響を与えている。一方、米国は食糧やエネルギーの自給率が高く、影響は比較的小さいため、ロシアによるウクライナ侵攻で「独り勝ち」するのは米国かもしれない。

***

国際関係研究所のHPからは、Toyo Eiwa The World Commentaryのバックナンバーを読むことができます。

皆さんがニュースで見聞きする国際問題について、詳しく知るためのとてもよい機会になりますよ。

国際関係研究所HP:https://www.gendaishikenkyu.net/the-world-commentary/


是非、チェックしてみてください!

コメント