【TOYO EIWA―THE WORLD COMMENTARY】仏大統領選挙:マクロン氏再選

東洋英和女学院大学は、国際関係研究所(https://www.gendaishikenkyu.net/)を付置しています。

同研究所では、一般の方向けにわかりやすく時事問題を解説するToyo Eiwa The World Commentaryを発出しています。

この度新しいコメンタリーが発出されました!ぜひご一読くださいね。



仏大統領選挙:マクロン氏再選

(小久保康之・東洋英和女学院大学教授) 
















©BERTRAND GUAY / AFP

2022424日(日)にフランスの大統領選挙の決選投票が実施され、現職のエマニュエル・マクロン氏が再選された。

2週間前の4月10日(日)に第1回投票が行われ、中道・現職のマクロン氏が27.84%、極右政党の「国民連合」率いるマリーヌ・ルペン女史が23.15%を獲得したが、両者ともに過半数は得られず、決選投票に進むことになった。第1回投票では、急進左派の「不服従のフランス」のジャンリュック・メランション氏が21.95%と追い上げたが届かず、極右のエリック・ゼムール氏は7.07%と得票率を伸ばせなかった。

第1回投票では、これまでフランス政界を率いてきた大政党である共和国連合と社会党の凋落が著しく、フランス政治の変化を如実に示すこととなった。また、現職のマクロン氏にとっては、今回の選挙は任期5年間の実績に対する評価でもあったが、反マクロンを掲げるルペン候補とメランション候補の追い上げが激しかったことから、フランス市民、特に低・中所得者層がマクロン氏の様々な政策に不満を持っていたことが明らかとなった。

マクロン氏の5年間は、決して順風満帆ではなく、富裕税の廃止や燃料税の引き上げに伴い「黄色いベスト運動」がフランス全土に広がるなど、富裕層を優遇し、低・中所得者の国民生活に負担を強いているという批判が常に付きまとっていた。ウクライナ危機の勃発は、外交努力を重ねるマクロン氏のイメージ挽回に一役買ったという側面があろう。

対するルペン候補は、移民排斥やEU統合反対を主張する過激な発言で一定の支持を得てきたが、前回の決選投票でダブルスコアでマクロンに敗退して以来、「脱悪魔路線」に転向し、極端な発言を控え、国民生活の改善を前面に打ち出す政策を掲げるなどして、次第に支持者を増やしていた。

マクロン氏とルペン氏の対決は5年前の決選投票の時と同じであり、反極右でマクロン氏に投票するのか、反マクロンでルペン氏に投票するのかという2者択一の決選投票となった。

投票の結果は、マクロン氏が58,55%、ルペン氏が41,45%で、選挙前の予想よりは差がついた。しかし、極右のルペン候補が4割強の支持を得たことの意味は大きい。今後マクロン氏は、ウクライナ情勢を睨みながら、国民からの反感をどのように抑えることができるか、正念場を迎えることになる。

フランスでは6月に総選挙が控えており、マクロン率いる「共和国前進」が第1党を維持できるかどうかが次の焦点となる。万が一、反マクロン陣営が過半数を占めることになると、マクロンは早くもレームダック(死に体)となる恐れもあり、目が離せない。 


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