【TOYO EIWA―THE WORLD COMMENTARY】ウクライナ侵攻: ロシアによる人道法違反と人権法違反 

  東洋英和女学院大学は、国際関係研究所(https://www.gendaishikenkyu.net/)を付置しています。

同研究所では、一般の方向けにわかりやすく時事問題を解説するToyo Eiwa The World Commentaryを発出しています。

この度新しいコメンタリーが発出されました!ぜひご一読くださいね。


ウクライナ侵攻:

ロシアによる人道法違反と人権法違反

今岡奏帆・東洋英和女学院大学助教 



空爆を受けたマウリポリの病院 HANDOUT /UKRAINE OF POLICE NATIONAL / PHOTO AFP©

 
ロシアによるウクライナ侵攻は、ウクライナに住む多くの人々を巻き込み、甚大な被害を及ぼしています。

皆さんは、武力紛争下においても、その遂行方法について国際法上守るべきルールがあることをご存じでしょうか。そうしたルールは国際人道法と呼ばれ、ジュネーヴ諸条約に規定されるほか、国際慣習法としても存在します。中でも重要なルールとしては、戦闘員と文民(戦闘員以外の一般住民)、あるいは軍事目標と民用物を区別して前者だけを攻撃対象とすること、文民や民用物に対して付随的な被害が及ぶことを極力避けること、そのための予防措置を講ずることなどが挙げられます。

ロシアが、3月9日に南部マリウポリの産科・小児病院を空爆したとのニュースを聞いて衝撃を受けた方も多かったでしょう。国連人権高等弁務官事務所によれば、ロシアの攻撃によって数百の教育施設や医療施設、数万の民家が損害を受けたほか、全国で少なくとも50の礼拝所が被害を受けたとされています(5月12日時点)。医療組織や礼拝所は、国際法上特に攻撃から保護されるべき対象です(ジュネーブ条約第一追加議定書12、53条)。また、同事務所によれば、ウクライナにおける文民の犠牲者は確認されているだけで8766人(死者は4031人、負傷者は4735人)にのぼるといいます(5月27日時点)。ロシアによる文民や民用物に対する攻撃、付随的被害の回避や予防措置の懈怠は、国際人道法に違反する行為です。

また、ロシアによるウクライナ侵攻は、国際人権法の観点からも非難されるべきです。国際人権法は、平時に国内において遵守されるべき規範だとも考えられますが、国外での武力紛争下において適用されることも妨げられません。これまで、自由権規約委員会、女子差別撤廃委員会、人種差別撤廃委員会、子どもの権利委員会、障害者の権利委員会といった、主要な人権条約の監督機関が、ロシアによるウクライナでの人権侵害について重大な懸念を表明してきました。 ロシアによるウクライナ侵攻自体の合法性はもちろん重要な論点ですが、ひとたび始まってしまった武力紛争の遂行方法についてのルールが遵守されること、及び、武力紛争で人々の人権が保障されることもまた、非常に重要な国際課題です。

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国際関係研究所のHPからは、Toyo Eiwa The World Commentaryのバックナンバーを読むことができます。

皆さんがニュースで見聞きする国際問題について、詳しく知るためのとてもよい機会になりますよ。

国際関係研究所HP:https://www.gendaishikenkyu.net/the-world-commentary/


是非、チェックしてみてください!

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