【TOYO EIWA―THE WORLD COMMENTARY】NATOの新たな戦略概念 :権威主義体制との対立を明示

  東洋英和女学院大学は、国際関係研究所(https://www.gendaishikenkyu.net/)を付置しています。

同研究所では、一般の方向けにわかりやすく時事問題を解説するToyo Eiwa The World Commentaryを発出しています。

この度新しいコメンタリーが発出されました!ぜひご一読くださいね。



NATOの新たな戦略概念

権威主義体制との対立を明示

 小久保康之・東洋英和女学院大学教授



©KENNY HOLSTON / POOL / AFP




2022年6月29日、スペインのマドリードに北大西洋条約機構(NATO)加盟30カ国の首脳が集まり、今後10年間の新たな戦略概念について合意した。

冷戦後パートナーとして位置づけられていたロシアは、ウクライナ侵攻により、一転してNATOの敵国に認定された。更に、ロシアをNATO加盟国の安全保障と欧州大西洋地域の平和と安定に対する最も重大で直接的な脅威と位置付けた。しかし、NATO側から脅威を与える意思がないことも明確にし、戦争の拡大を阻止するためにあくまでもロシアとの意思疎通を図る道も残している。

ウクライナへは、長期的な支援を約束し、ウクライナ軍兵器の近代化を図る「包括的支援策」も決定した。これにより、ウクライナの領土保全の側面支援を継続するNATO側の意図が明確となり、ロシア・ウクライナ双方の激戦が長期化する可能性が濃厚になった。

同様に、中国の動向に対しても、米国の懸念を背景に、自由民主主義諸国の利益・安全保障・価値観に挑戦しようとするものであり、ルールに基づく国際秩序を覆すべく躍起になっていると断定した。

このように、今回のNATO首脳会議は、自由主義陣営のルールに基づく国際秩序に武力で対抗しようとする姿勢を見せている権威主義陣営との対決姿勢を鮮明に打ち出すものとなった。

他方、これまで、中立政策を国是としてきたフィンランドとスウェーデンのNATO加盟が承認された。加盟承認には、NATO全加盟国の批准が必要であり、これまでトルコは北欧2カ国が、トルコがテロ組織と断定していた「クルド労働者党」(PKK)を支援していたことなどから反対を表明していたが、北欧2カ国がトルコの立場に理解を示したことで、障害は除去された。これにより、バルト海一体の安全保障体制は一層強化されることになった。

日本からも岸田首相が参加し、日本としても国際ルールに基づく国際社会の発展、権威主義体制の武力による威嚇に対して、他のNATO加盟国と足並みをそろえることになった。

今回のNATO首脳会議での方針転換は、正に歴史的転換点であり、今後の国際社会は、自由民主主義陣営と権威主義体制の2項対立構造へと複雑に変化していくものと思われる。

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皆さんがニュースで見聞きする国際問題について、詳しく知るためのとてもよい機会になりますよ。

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