【TOYO EIWA―THE WORLD COMMENTARY】世界の瓦解を止めるために

 東洋英和女学院大学は、国際関係研究所(https://www.gendaishikenkyu.net/)を付置しています。

同研究所では、一般の方向けにわかりやすく時事問題を解説するToyo Eiwa The World Commentaryを発出しています。

この度新しいコメンタリーが発出されました!ぜひご一読くださいね。


世界の瓦解を止めるために

 河野毅・東洋英和女学院大学教授


    キーフ近郊のひまわり畑を通過する軍用ヘリの影 ©Sergei SUPINSKY / AFP


「世界」という名の家の瓦屋根が落ち始めている。このままでは、家全体がガラガラと崩れていくかもしれない。この落ち始めている瓦が、ウクライナ戦争である。米・ロシアの直接対決を避けながら進むウクライナ戦争の終わりは見えない。同時に、核武装大国ロシアに震撼する各国は核武装大国米国の核の傘にしがみ付く。核の傘にしがみつきながら、世界の軍拡は進む。各国が合理的な判断をすれば軍備バランスは決まるが、リーダーが常に合理的であるわけがない。新しい安全保障枠組みは模索中だが、軍拡は進む。ただ、この軍拡を誰がいつ止めるのだろうか。そして、中国・ロシア・北朝鮮という核兵器を持つ3国に囲まれる日本にいると、核抑止力下の「平和」に限界を感じる。

この戦争は、世界的な価格上昇を加速させた。ガソリン、食料品など値上げは世界中を苦しめる。途上国には大打撃である。自国通貨の価値が急落し、インフレは止まらない。米ドル建て債務は急激に重くなった。ウクライナの小麦に依存してきた一部アフリカ諸国の貧困層は飢餓状態に入っている。世界食糧農業機関によると食糧不足を経験している人はすでに9億人を数える。各地の紛争や気候変動で家を追われた人はついに1億人を上回った。猛暑の影響で世界中が災害に見舞われている。温暖化ガスは2010年比で2030年には45%削減されるべきだが、各国の削減約束が履行されても14%増加する。
戦争は止まらない。温暖化は止まらない。インフレは止まらない。食糧危機は止まらない。一方、平和への道は止まっている。

瓦解直前の「世界」を目の前にして、正しいことを言い続けるのが国連の役割である。国連の他に世界各国が集まる場は他にはないからだ。武力で他国を侵略してはいけない。戦争で民間人を殺害してはいけない。世界は一致して食糧とエネルギーの安定供給に合意しよう。温暖化ガスの排出を減らそう。

ただ、その国連は世界政府ではない。193の加盟国が主役で、それは国会に集まる国会議員の役割と似ている。ただ、国会の意思(法律)を執行する政府という機関は、国連にはない。執行は加盟国に任されている。だから、日本では有権者の意思を日本政府に届けることが大切になる。読者は、710日の参院選で正しいと思う候補に投票しただろうか。今回の参院選では、投票率がやっと50%台を回復したそうだが、低過ぎないか?


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国際関係研究所のHPからは、Toyo Eiwa The World Commentaryのバックナンバーを読むことができます。

皆さんがニュースで見聞きする国際問題について、詳しく知るためのとてもよい機会になりますよ。

国際関係研究所HP:https://www.gendaishikenkyu.net/the-world-commentary/


是非、チェックしてみてください!

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