【TOYO EIWA―THE WORLD COMMENTARY】 ウクライナ危機:国連憲章を読もう

  東洋英和女学院大学は、国際関係研究所(https://www.gendaishikenkyu.net/)を付置しています。

同研究所では、一般の方向けにわかりやすく時事問題を解説するToyo Eiwa The World Commentaryを発出しています。

この度新しいコメンタリーが発出されました!ぜひご一読くださいね。


ウクライナ危機:国連憲章を読もう

 河野毅・東洋英和女学院大学教授

1012日の国連総会決議の様子© Ed JONES / AFP

   10月24日は今年設立77周年となる国際連合の憲法である国連憲章が発効した日を記念する「国連デー」だ。国連憲章は戦争を違法化することで平和を希求し、全ての人の人権が尊重され、生活が向上し豊かな生活ができるように世界は精一杯努力する、と謳っている。
   人類のこの崇高な理想と裏腹に、今年2月にロシア連邦によるウクライナ侵略が始まった。ロシアが安全保障理事会の常任理事国であるため法的拘束力のある安保理決議案はことごとく否決されている。その結果、法的拘束力のない国連総会決議でロシアによる侵略を非難する国連メンバー国の声が発出されてきた。直近の総会決議はロシアによる一方的なウクライナ4地域の併合を認めない10月12日の決議で、そこでは143カ国が賛成、ロシア含む5カ国が反対、35カ国が棄権だった。ロシアによる侵略直後の今年3月2日の総会決議(ロシアが無条件にウクライナから撤退することを要求)では、賛成141、反対5、棄権35だったので、国際社会のロシア批判の意思は8ヶ月経ってもほぼ変わっていない。
   国連憲章は、全ての人は人としての普遍的な尊厳と価値を持つのでメンバー国は民の尊厳と価値を守る責任があるとする。ということは、国家は個人を尊重することで成り立つ事になる。この考え方は、経済を見ると分かりやすい。個々人が豊になり納税するようになれば結果として国家予算が増え、例えば道路も綺麗になる。
   反対に、国民の豊さに依存しないエリートが支配する国家(暴力による国民の搾取や弾圧、石油など天然資源に依存する国家)も存在する。今回の決議でロシアに同調した北朝鮮、ベラルーシ、ニカラグア、シリアである。3月の決議ではニカラグアに代わりエリトリアが反対票を投じたが、この2国は独裁政権下にある。独裁者は人の尊厳を主張する国民が怖いのである。
 注目は棄権した2大国、中国とインドである。2国とも国民からの納税でこれからも成長したいがエリートは人の尊厳を主張する国民が怖い。
   国連総会が、国連憲章の精神を主張し続けることは、独裁政権や自国民を蔑ろにするエリートを批判する意味がある。その根底には、全ての人は人として普遍的な尊厳と価値を持つという信条がある。国連設立77周年を記念して、是非、国連憲章の前文を読み国連憲章を守る行動は何か、を考えて欲しい。他者を大切に行動できれば、世界は平和に一歩近づくはずだ。

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皆さんがニュースで見聞きする国際問題について、詳しく知るためのとてもよい機会になりますよ。

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