【TOYO EIWA―THE WORLD COMMENTARY】軍備増強と平和への道?

東洋英和女学院大学は、国際関係研究所(https://www.gendaishikenkyu.net/)を付置しています。

同研究所では、一般の方向けにわかりやすく時事問題を解説するToyo Eiwa The World Commentaryを発出しています。

この度新しいコメンタリーが発出されました!ぜひご一読くださいね。


軍備増強と平和への道?

河野 毅 (国際社会学部 教授)


ウクライナが供与を要請するドイツ製レオポルド戦車

©Wojtek RADWANSKI / AFP



昨年末に岸田政権が表明した日本の「防衛費増額」の方針は、今月13日のホワイトハウスの首脳会談でバイデン米大統領から「全面的に支持」された。ただ、この軍備増強の傾向は、日本だけではなく、世界中で進む巨大な波だ。

 ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)は、ロシアによるウクライナ侵攻以前の2021年に、世界の軍事費が史上初めて2兆ドル(1ドル130円換算で260兆円)を超えたと報じた。同研究所によると世界の軍事費は過去7年間連続して増加している。

 SIPRIによると世界最大の軍事大国はアメリカである。2021年のアメリカの軍事費は8010億ドルだった(2023年予算では8580億ドルと大幅増)。2021年の2位は中国で、2930億ドルだ。3位はインド、4位は英国、5位はロシアと続く。ちなみに日本は541億ドルの9位で、6位のフランス、7位のドイツ、8位のサウジアラビア、10位の韓国と並んで500億ドル台グループにある。

2022年2月からのウクライナ戦争は、すでに上昇傾向だった軍備増強に拍車をかけた。日本が位置するアジアでも軍拡は進む。中国の海洋進出(台湾併合への動きを含む)と北朝鮮のミサイル攻撃能力強化を受けて、日本と並び韓国、豪州もさらに軍備を増強する予定だ。

軍備増強は、世界情勢の不安定化に比例する。相手国がある政治目標達成のためにどの武器を使うか読めないほど自国の不安感は増し、その結果、自国と同盟国の防衛のため軍備は増す。相手国の政治目標が見えないと、さらに不安感は増す。課題は、平和を維持するために適正な軍事力をどのレベルで確保するかと、国民がそれを納得するかである。

ウクライナ戦争で使われる兵器の能力は益々高度になっているが、それは核兵器という究極の破壊兵器を持つロシアの意図が読めず、さらに戦争の着地点が見えないことが原因となっている。今の世界の軍備増強も、ウクライナ戦争のように相手国の武器使用の意図が読めない不安感に煽られた結果に見える。

5月に広島で開催されるG7(主要7カ国首脳会議)で、岸田政権はこの不安な世界に向けて平和のメッセージを表明する予定である。その中身は、不安をさらに煽る内容ではなく、不安を取り除く外交努力を前面に出した内容であるべきだろう。

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皆さんがニュースで見聞きする国際問題について、詳しく知るためのとてもよい機会になりますよ。

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