「地に足をつけて考える」をモットーに学ぶ――桜井愛子教授

今日は、国際社会学科の桜井先生にお話を伺います。よろしくお願いいたします。

桜井先生は、国際社会学科の国際協力コースで、教育開発や防災を専門に教えていらっしゃいます。近年、地球上のあちらこちらで災害が起こっていますが、今日は防災教育や災害からの復興について、そしてSDGsについてもお話を伺いたいと思います。


桜井先生は国際協力の分野でさまざまな経験を積んでこられたと思いますが、具体的にどのようなお仕事をされてきたのでしょうか?

1990年代、日本のODAが世界1位となりましたが、どうしたら国際社会に対して日本人や日本企業が「顔を見える」援助を進められるかということを考えて仕事をしていました。


―まだ日本経済に活気があるころには、日本は多くの国々に多額のODAを行っていましたが、国際社会での日本の存在感の向上にはあまりつながっていませんでしたよね。具体的にはどのようなプロジェクトに携わられたのでしょうか? 

カーター元アメリカ大統領のNGOと協力して、アフリカの感染症ギニア虫症の撲滅に向けて募金活動を行いました。そのプロジェクトでは、約9千万円を集めてアフリカ14カ国に日本車やオートバイなどを寄贈することができました。


―アフリカのような医療へのアクセスが難しい地域において、交通手段を手に入れることは命を救うことに直結しますよね。素晴らしいですね! 

アメリカがベトナムとの国交を回復した1995年直後にはアメリカの首都ワシントンDCにある国際復興開発銀行(世界銀行)で働く機会があり、ベトナムの水力発電所建設など民間セクター開発分野でのプロジェクトにも関わりました。

博士号を取得後、2000年代には開発コンサルタントとして教育開発分野で活動をしていました。中東の最貧国であるイエメンで女子教育推進のため、JICAの技術協力プロジェクトに携わりました。韓国人の宣教師以外は外国人の全くいない地域で、イエメン人の同僚と一緒に女児が学校に行けるよう、両親を説得するためのキャンペーンを実施したり、女児のための学習環境を整備したり、男女に関わらず地元から教員を採用するなど、これまで意見を聞かれなかった保護者、特に女性の意見に耳を傾けて女子教育の機会を獲得するために活動しました。


外国人のいない中東イエメンで同僚と


―危険な地域でもあり、途上国で活動する女性は少ないと思いますが、アフリカやイエメンなど国際協力が求められる最前線で活動を行っていらっしゃったのですね。先生は日本の被災地でも活動していらっしゃいますよね。

東日本大震災をきっかけに、国際NGOで東北の被災した学校の復興や防災教育に係るようになりました。大震災後、現在まで継続して石巻市の学校防災の拡充に向けた研究実践を行っています。こうした日本での経験を踏まえ、今では海外の学校防災の推進についての研究や助言を行っています。

3月にもルーマニアで教育現場の防災についてのシンポジウムで講演を行いました。

ルーマニアでのシンポジウム→ 日本の学校防災の課題と拡充に向けた方策についての講演


―大学では、国際協力や防災教育などについて教えていらっしゃいますが、昨今、トルコでの大地震もありましたし、地球規模で考える必要がある環境問題などもあります。先生の授業では、どのようなことが学べるのでしょうか?

 大学では、国際協力入門、国際協力論B、人文地理学、フィールド調査法、海外研修を担当しています。国際協力入門や人文地理学では、「鳥の目」から国際社会をみわたしながら、日本と世界のつながりについて考える授業です。人間と自然や地球環境との関わり、国と国のつながり、トランスナショナルな国境を超えたつながりについて学びます。

国際協力論Bでは、SDGsの目標4にあたるすべての人々が質の高い教育を受けられるようにするための国際教育協力を扱っています。フィールド調査法では、質的調査を実際に調査の対象とするフィールドに足を運んで行うための調査手法を学びます。特に、国際協力でいわゆる途上国において調査や研究、プロジェクトを実施する際のマナーや情報を得るためのコミュニケーション手法についても学びます。


―桜井先生は海外研修も担当されていますよね。先生がご担当されている海外研修では、どのような地域で何にフォーカスして学ぶのでしょうか?

海外研修では、これまでは2004年のインド洋大津波の被災地インドネシア国アチェ州を訪問し、現地の東日本大震災と同じ津波災害からの被害や復興が、国や宗教、文化、政治などが異なるとどのように変わるのか、実際の体験を通じて学びました。新型コロナウイルス感染症拡大で海外に行かれなかったときは、オンラインでアチェの専門家からのレクチャーを受け、現地との交流を深めました。

海外研修で訪れたインドネシアのアチェ州で学生と民族衣装を着て

―先生は昨年、『社会科学からみるSDGs』というご著書を英和の先生方と一緒に執筆されましたが、この本の意図や目的を教えてください。 

『社会科学からみるSDGs』は、新型コロナウイルス感染症の拡大やウクライナでの戦争などによりヒトやモノの流れが制限され世界的に影響を受ける中において、SDGsへの理解を通じて今こそ世界を近くに感じてほしいという考えから本学の先生方を中心にまとめた本です。経済活動と人間社会、そして地球環境という持続可能な開発を支える3つの側面から、グローバルな課題を構造的に理解できるよう社会学、政治学、経済学、歴史学など社会科学の専門家が身近な課題を例に解説しています。

 

―世界中で活動の経験がある桜井先生ですが、学生時代から世界に目を向けていらっしゃったのでしょうか?学生時代はどのような学生さんでしたか?また、どんなことに熱中していたのでしょうか?

私の学生時代は、昭和が終わり、天安門事件やベルリンの壁が崩壊した時期でした。激動する国際社会の変動をリアルに体験しました。そのような刺激もあり、大学では国際関係を学び、インターカレッジの模擬国連に参加し、他大学の友人と冷戦終結の激動する時代の国際問題を熱く語っていました。模擬国連でニューヨークの国連本部も訪問しました。

 

―すごい意識の高い大学生だったのですね!留学も経験していらっしゃいますよね? 

はい。交換留学で、アメリカの首都ワシントンDCにあるジョージタウン大学に留学し、国際政治の中枢で学んだことがその後のキャリアに大きな影響を及ぼしていると思います。また、30代の初めにニューヨークのコロンビア大学に留学し、そこで911のテロを体験しました。一瞬で見慣れたものが失われる経験は、東日本大震災でも経験したことでした。こうした経験が、現在、防災を専門に研究することにつながっているのかもしれません。

 

―これから大学生になる高校生と今大学で学んでいる学生にメッセージをお願いいたします。 

私のゼミは、「地に足つけて地球を考える」というのがモットーです。国際社会の仕組みやつながりを広く理解する力をつける一方で、足元の自分たちの生活スタイルをどう変えられるのか、持続可能な社会づくりに積極的に参加できるか、大学生活を通じて自分なりの答えを探してください。世界を広くズームアウトして観察し、問題の本質をズームインして理解する。カメラのレンズのように自由自在に物の見方を変えながら、これからの人生を生き抜く力を大学で鍛えてくださることを期待しています。

 

桜井先生は、618日のオープンキャンパス(国際・留学DAY)の特別プログラム「一杯のコーヒーから考えるSDGs」でご講演いただきます!

618日のオープンキャンパスはこちら

 






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