無料塾では、生徒も講師もみんな仲間――国際コミュニケーション学科3年 織茂奈那さん・那須陽香さん

 

今日は、1年生の時から「かわさき芽吹塾」という無料塾でボランティア講師をしている国際コミュニケーション学科3年生の、織茂奈那さんと那須陽香さんに無料塾でのボランティア講師の活動についてお話を伺います。

左:那須陽香さん、右:織茂奈那さん @大学チャペル前で



―お二人は大学1年生の時から無料塾で講師のボランティアを行っていますが、きっかけは何だったのですか?

那須さん:アルバイト先の先輩が立ち上げた塾だったのですが、話を聞いて素晴らしいな、関わりたいなと思って、講師として参加しました。20215月に設立されたのですが、当初は生徒も2人とかでこんなに長く続くとは思っていませんでしたし、塾がこんなに大きくなるとも想像していませんでした。現在では、40人の中学生・高校生が塾を利用しています。


―素晴らしい発展ですね。織茂さんはいつごろから参加したのですか?

織茂さん:私は大学で那須さんと仲良くなり、ボランティアをしていることを聞いて、最初は少し理解できない部分もあったのです。塾でアルバイトもしているので、講師として教えてもお金もらえないなんて・・・と正直思ったのですが、無料塾での講師を始めて、ここでの活動はアルバイトで行う講師とは意味が違うことが分かりました。

 

―アルバイトの講師と無料塾のボランティア講師では、どう違うのですか?

織茂さん:アルバイトで講師をしている塾の生徒と無料塾の生徒では、学習意欲が全く違います。多分、今まで塾に行きたくても経済的な理由などで通うことができなかった、勉強したいけど、誰かに教えてほしいけど、それが叶わなかった生徒たちなので、学びたい気持ちが本当に強くて、教える側も真剣になるし、充実感や達成感を覚えることが多いです。

 

―那須さんはほぼ立ち上げの時から参加していますが、「かわさき芽吹塾」のことを教えてください。

那須さん:はい。20215月に大学生が立ち上げました。目的は、有料の塾に通えない生徒たちに受講料や教材費をもらわないで勉強を教える場所を提供するために立ち上げられました。「かわさき芽吹塾」では、3つの支援を行っています。一つは、学習支援、二つ目が教材や文房具などの提供などの学習に必要な物品支援、そして三つめが、居場所の提供です。交通費だけは自己負担になります。現在は、溝の口に1教室、武蔵中原に1教室があります。教室は地域の公民館などを借りています。対象は、中学生と高校生です。入塾には3つの条件があります。一つは学習意欲があること、二つ目は、有料塾に通えない明確な理由があること、最後が、有料塾も含めて他の塾に通っていないことです。保護者との面談を経て入塾が認められます。

基本的には、毎週土曜日の夜6時から9時に3時限行っていて、土曜日は基本的に英語と数学を教えます。平日には自習時間枠というのが設けられていて、講師が受験生のニーズに合わせて理科と社会を教えます。

生徒さんを指導中の那須さん(右)


―学生が立ち上げたボランティア活動とは思えないような本格的な塾ですね!驚きました。生徒からは一切費用を取らないということですが、どうやって運営しているのですか?

織茂さん:私は塾の中で運営にも少し携わっているのですが、全て寄付で賄っています。実は新聞やテレビなどのメディアにも取り上げていただき、かなりの寄付が集まるようになりました。毎月決まった額を寄付してくださる方もいたり、今後数年の運営には問題ないぐらい寄付をいただいています。また私と那須さんは、SNS担当でもあるのですが、Instagramでの発信を見てくれて寄付をしてくれることもあります。朝日新聞の「天声人語」で取り上げられたり、東京新聞にも活動が紹介されました。また、日本テレビの「世界一受けたい授業」でも紹介されました。そのようなメディアを通じて塾の取り組みが多くの人に知られることになり、理解してくださった方から寄付をいただけるようになりました。

 

―メディアやインターネットの力はすごいですが、何より内容が素晴らしいので、皆さんが寄付をしてくださるのですよね!次に二人がこの活動に関わって感じたことなどをお聞きします。無料塾の講師の活動を通しての喜びややりがいはいかがですか?

那須さん:本当に生徒たちが一生懸命なので、教えていてやりがいしかないです。少しずつ学力が上がっていったり、学校でのテストの点数が上がったり、受験で希望する高校に受かったりしたときは、自分のことのようにうれしいです。みんな学びたくて目がキラキラしているんですよ!この子たちにとっては、塾などに通うことなんて不可能だと思っていたのに、それが実現して、それをきっかけに頑張ることで将来が開けていき、人生が変わるんだと思うと感動しますし、こちらも一生懸命になります。

織茂さん:入塾してきた生徒で、最初少し学ぶのが遅いというか、読むことに時間がかかったり、長時間集中できない生徒がいたんですね。保護者の方も最初の面接で、うちの子は1時間でいいですから、無理だからみたいな話で。でも塾に通ううちに少しずつ学習能力が付いてきたみたいで、成績がすごく上がっていって、志望の高校に合格したんです。最初のころのその生徒の様子からは、勉強することや集中することも大変そうで、でも少しずつできるようになって、変わっていったんですね。そのような成長を見届けることができて感動しましたし、人間ってすごいって思いました!

生徒さんを指導中の織茂さん(右)


 ―素晴らしいとしか言葉が見つかりませんが・・・一方で難しいなとか悔しいなと思った経験はないですか?

織茂さん:難しいのはことば選びです。みんなが学校に通えているわけではなかったり、家庭環境も複雑だったりするので、学校どうだったとか、家庭の話はしません。みんなが学校に行けているという前提には立たずに、ことばを選んで話しかけるように心がけています。学校どうだった?ではなく、今日どうだった?というように話しかけます。

また悔しかったことは、ある生徒に英語を教えていて、私は文法を一生懸命教えていたんですね。でもその生徒の学校では文法ではなく、文章の暗記がメインの試験だったんです。そして「試験ぜんぜんできなかったぁ~」と言われて、申し訳ない気持ちと自分の教え方が間違っていたという悔しい気持ちになりました。それからは、生徒の学校の教材を確認したり、こちらも生徒たちが成績が上がるためにどのようなことを教えたらいいのかを勉強しています。

 

―そんなところまで面倒見てくれるんですね・・・すごい!学習支援以外に居場所の提供ということもおっしゃっていましたが、どのようなことですか?

那須さん:塾では学習支援と教材などの物品支援に加えて、居場所の提供ということも重要視しています。そのため、月に1度はイベントを企画して、みんなで遊びます。そのような取り組みは、講師と生徒という隔たりをなくし、同じコミュニティの仲間という意識を醸成させます。教える側と教えられる側ではなく、みんなで楽しみながら一緒に成長していく場所であり活動だと感じます。

 

―ボランティア活動でありながら、得るものが大きい活動ですね。講師としてはどんな課題がありますか?

織茂さん:講師も大学生や高校生なので、他の活動もあるため、毎回同じ講師が同じ生徒を教えられるとは限りません。そのため、生徒一人ひとりのファイルを作っていて、誰が次に講師になってもそのファイルを見れば前回何を教えたのか、その生徒の不得意な部分は何なのかなどを記録して、情報共有をしています。そうすることで講師が変わってしまうという課題を少しは改善できていると思います。

「かわさき芽吹塾」の授業の様子


「かわさき芽吹塾」ホームページはこちら

「かわさき芽吹塾」のInstagramこちら

 

インタビュー後記:

大学生であっても、信念をもって行動に移す、その結果多くの人たちが賛同してくれて、夢が現実になっていく、そして多くの人の人生を変える機会を提供できるというお話を聞きました。「芽吹塾」の活動にも、それを支えるボランティア講師たちの活動に感動しました。このような取り組みがもっともっと広がって、多くの子どもたちの人生にチャンスを与えてあげたいと考えました。寄付します!




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