【TOYO EIWA―THE WORLD COMMENTARY】SDGs(持続可能な開発目標)後半戦

 東洋英和女学院大学は、国際関係研究所(https://www.gendaishikenkyu.net/)を付置しています。同研究所では、一般の方向けにわかりやすく時事問題を解説するToyo Eiwa The World Commentaryを発出しています。

 この度新しいコメンタリーが発出されました!ぜひご一読くださいね。


SDGs続可能な開発目標)後半戦

河野 毅(国際社会学部 教授) 



©︎UN Department of Global Communication


2030年までに世界が達成すべき17のゴールを掲げるSDGs(持続可能な開発目標)が折り返し地点を過ぎ、ついに後半戦に入った。来る91819日に国連を舞台に予定される首脳級SDGs「未来サミット」が出すメッセージは、まだ半分ある、もっとアクセルを踏め、だろうが、半分終わった結果を見ると、悲壮感がある。


4月末にグテーレス国連事務総長から総会に提出されたSDGs中間報告書の副タイトルは「人類と地球の救出計画に向けて(towards a rescue plan for people and planet)」だった。そこでは、冒頭から「多くのゴールはゆっくりとまたは極端に軌道を外れている」と分析している。


ここで、日本のSDGs達成状況を確認しておこう。国連事務総長の諮問機関でSDGsの進歩状況を調査報告するSDSNSDGs Solutions Network)の2023年報告書は各目標の指標を危機順に赤・橙・黄・緑を使って各国をランク付けする。日本は世界163ヵ国中21位と2017年の11位からランクを落としたが、保健(目標3)、教育(目標4)、水(目標6)では赤が一つも無い優秀な通信簿である。しかし、日本の足を引っ張るのは目標5「ジェンダー平等」(女性の国会議員の少なさ&男女の賃金格差)、目標12「作る責任・使う責任」(プラスチック&電子機器廃棄量の多さ)、目標13「気候変動対策」(一人当たりのCO2排出量の多さ)、目標14「海の豊かさも守ろう」(海洋資源の収穫量過多)、目標15「陸の豊さも守ろう」(絶滅危惧種の増加)である。目標13の温暖化と目標1415の生物多様性の喪失は相互関連している課題である。そして、日本よりランクの低い国々も沢山あり、それぞれ課題を抱えていることも忘れてはならない。


地球が抱える課題が深刻化するのを受けて学界では、人類の活動が地球の将来に影響を与える時代に突入したという意味で新しい地質時代を指す「人新世」という言葉が流行だ。巷では、地球環境の悪化、核戦争の可能性、人工知能(AI)の暴走など、人為的脅威が人類を破滅に追い込むという終末論を唱えることで生計を立てる輩が増えている。


終末論は、罪のない若者達を道連れにするので若者にはいい迷惑だ。悲壮感も若者のやる気を削ぐ。そして、権力者は常に近視的だ。国民も扇動されると近視的になりやすい。近視的誘惑に抗し、9月のSDGsサミットは若者視点の前向きで長期的なメッセージを出せるだろうか?ということは2030年という年は終わりではなく次の始まりだという長期的視点を維持する必要がある。もう半分終わった、まだ半分ある、という議論は建設的でない。


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国際関係研究所のHPからは、Toyo Eiwa The World Commentaryのバックナンバーを読むことができます。皆さんがニュースで見聞きする国際問題について、詳しく知るためのとてもよい機会になりますよ。

国際関係研究所HP:https://www.gendaishikenkyu.net/the-world-commentary/

是非、チェックしてみてください


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