【TOYO EIWA―THE WORLD COMMENTARY】トルコ地震から半年の学校

  東洋英和女学院大学は、国際関係研究所(https://www.gendaishikenkyu.net/)を付置しています。同研究所では、一般の方向けにわかりやすく時事問題を解説するToyo Eiwa The World Commentaryを発出しています。

 この度新しいコメンタリーが発出されました!ぜひご一読くださいね。



トルコ地震から半年の学校

桜井 愛子(国際社会学部 教授) 



幹線道路沿いの瓦礫の中に残された建物(ハタイ県/写真は筆者撮影)



202326日月曜日417分、トルコ南東部を震央とするマグニチュード(以下、M7.8の地震が、同日1324分にもM7.5の地震が相次いで発生した(USGS発表)。これら地震はカフラマンマラシュ地震と呼ばれ、南東アナトリア地方を中心に被害は11県に及び、トルコでの死者は50,783名、約300万人が避難を余儀なくされ、トルコ人口の16.4%に当たるおよそ1400万人が影響を受けたとされる。内陸で4つのプレートが重なるプレート境界に位置しているトルコでは、1900年以降にM7.0以上の地震を4回経験する地震大国である。しかし、今回の地震はその中でも最大の犠牲者を出すこととなった。これほどの被害を及ぼした要因として、地殻変動が約400キロに及ぶ内陸で発生した規模の大きな地震により人口の大きい都市を含む広範囲に揺れが広がったこと、地震の揺れに対して構造物が頑強でなかったこと等複合的要因によることが指摘されている。


筆者は同地震に関する国際緊急共同研究・調査支援プログラム(J-RAPID)の一員として地震から6ヶ月が経過した被災地の学校を訪問し、被災3県(カフラマンマラシュ、ガディアンテップ、ハタイ)の小中高等学校、大学計6校での教育復興に係る調査を行った。被災地の学校では被害の程度によって異なるものの震災後、1ヶ月半〜3ヶ月で学校が再開された。しかし、倒壊した学校も多く、被害を免れた他の学校校舎を間借りし午前は小学校、午後は中学校等と2部制での授業が行われている。家を失った被災者の多くは、コンテナシティと呼ばれる仮設住宅に住み、子どもたちや教員の多くはそこから学校に通っている。被災地域では児童生徒数が減少し、被災した教員の多くも他地域へ転出、被災地内外での教員の再配置が行われている。学習環境の整備、学習時間の確保とあわせて被災者に対する心のケアも重要課題である。瓦礫の中から数日後に救出されたり、家族を失った体験を涙ながらに調査団に共有する教員も見られた。また「地震のメカニズムについて、これだけの地震を経験した生徒にどう教えたら良いのか」との声も聞かれ、被災地における防災教育の内容やタイミングについての検討の必要性が示された。日本はODA(政府開発援助)を通じてトルコの防災教育支援を行ってきたが、トルコの学校が直面している課題の多くを日本は過去の大震災で経験している。トルコの地域性に配慮しながらも、日本の教育復興の経験を共有する方策を検討していく。


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国際関係研究所のHPからは、Toyo Eiwa The World Commentaryのバックナンバーを読むことができます。皆さんがニュースで見聞きする国際問題について、詳しく知るためのとてもよい機会になりますよ。

国際関係研究所HP:https://www.gendaishikenkyu.net/the-world-commentary/

是非、チェックしてみてください

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