【TOYO EIWA―THE WORLD COMMENTARY】5期目プーチン露大統領の蹉跌ー町田幸彦教授
東洋英和女学院大学は、国際関係研究所(https://www.gendaishikenkyu.net/)を付置しています。同研究所では、一般の方向けにわかりやすく時事問題を解説するToyo Eiwa The World Commentaryを発出しています。
この度新しいコメンタリーが発出されました!ぜひご一読くださいね。
5期目プーチン露大統領の蹉跌
町田 幸彦(国際社会学部 教授)
ロシアのプーチン大統領は3月15~17日の大統領選挙に圧勝し、意気揚々と3年目に突入したウクライナ侵攻の大攻勢へと向かうはずだった。ところが、露国内の大規模テロ事件が目算を暗転させた。内憂の影がつきまとう5期目プーチン体制は、「西側」及びNATO(北大西洋条約機構)という“外患”の増幅に躍起になるばかりだ。
モスクワ近郊のコンサートホールで3月22日起きたテロ銃撃事件では同月末までに、143人の死亡が確認された。拘束された約10人のうち実行犯として起訴された4人はいずれも旧ソ連・タジキスタン出身という。事件後に過激派組織「イスラム国」(IS)が犯行声明を出した。プーチン政権はIS下部組織の犯行を追認しつつ、「ウクライナや欧米の関与」を主張する。ウクライナと米国はロシアのプロパガンダを全面否定している。
情報錯綜の末、真相は闇の彼方に。いつものロシアの展開であるが、事件関連の経緯から権力機構内部の決定的変異が透けて見える。その実態はプーチンの大失態劇だ。
これに先立ち、FSB特殊部隊は3月2日、ロシア南部でISメンバーと特定した6人を殺害した。同7日、ISが計画したモスクワのユダヤ教会テロ襲撃をFSBは阻止し、「犯人が銃撃戦で死亡した」と発表した。(ロイター通信、タス通信など)
緊張高まる国内で面目まるつぶれのプーチン大統領に権威の陰りが生じている。結果的にそうなったのか、そのように仕組まれたかはまだ分からない。ただ、過去のプーチンのような力は確実にそがれている。大統領選挙の高支持の数字が虚しく映る。
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