【TOYO EIWA―THE WORLD COMMENTARY】多文化協働社会を考えるー井上美砂講師

  東洋英和女学院大学は、国際関係研究所(https://www.gendaishikenkyu.net/)を付置しています。同研究所では、一般の方向けにわかりやすく時事問題を解説するToyo Eiwa The World Commentaryを発出しています。

この度新しいコメンタリーが発出されました!ぜひご一読くださいね。


多文化協働社会を考える

井上 美砂(国際社会学部 専任講師)


高齢者の介護をするマニラ出身のフィリピン人介護士© KAZUHIRO NOGI /AFP


51日にバイデン米国大統領が「日本は外国人が嫌いで移民を望んでいない」と発言したことに対して、日本政府は2日、「正確な情報に基づかない発言があったことは残念だ」として、外交ルートで米国に抗議を申し入れた。バイデン大統領の発言は、日本に対するメッセージというよりは、11月に行われる大統領選での移民票を意識しての発言であったと考えられる。しかし、バイデン大統領の発言のもう一つの解釈として、国際社会から見た日本の移民政策に対する評価と捉える必要がある。

「移民」の定義はさておき、日本社会はすでに多くの外国人労働者を受け入れている。202310月の調査では、日本で働く外国人労働者数は204万人と過去最高を更新した。2019年の入管法改正では、人手不足が深刻な介護、建設業、農業、外食産業、製造業など14業種で外国人の雇用が可能になった。また「技能実習制度」は、日本人後継者がいない農業、漁業、食品加工業などの分野で欠かせない労働力となっている。

他方、外国人留学生に目を向けると、日本政府がグローバル戦略の一環として2008年に打ち出した「留学生30万人計画」は、2019年には31万人を超えその目標を達成した。日本政府は、世界的な高度人材獲得競争を視野に、留学生を「高度人材の卵」と位置づけ、中長期的に日本経済を支える人的資源として、日本での就職を奨励している。そのために全国の地方出入国管理局・支局に留学生の日本での就職支援に係る専用相談窓口を設置し、20205月より運用を開始している。

 日本政府は産業界からの外国人労働者受け入れ拡大の要請に応じるために、さまざまな形で外国人労働者を受け入れてきた。そして、多くの産業で外国人の労働力に依存しているという現実がある。一方で、移民政策については頑なに議論を避けている。そのようなダブルスタンダード的体質から脱却して、日本の将来を担う多様な人材の存在に目を向け、受け入れ側の視点だけでなく、共に協働する外国人の声にも耳を傾けて、多文化協働社会のあり方を議論する必要があるのではないだろうか。外国人労働者は労働力ではなく「人」である。就労を目的に来日したとはいえ、生活者でもある。彼・彼女らを社会の一員として受け入れるという姿勢をもたなければ、日本は外国人から選ばれない国になってしまうかもしれない。


   

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